トップメッセージ

代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO) 奥田 務

経営統合と経営改革の推進を柱に、「持続的な利益拡大を伴う成長」を目指します。

 現在、百貨店は“歴史的な転換期”にあります。
百貨店が業績不振に陥っている根本要因は、マクロ経済環境の急激な悪化による影響以上に、自らが抱える構造的課題「マーケット対応力の弱さ」と「高コスト・低収益構造」にあります。また、現状の百貨店のビジネスモデルに依存した経営を続ける限り、将来の成長はおろか、生き残ることさえ難しいと考えます。
 そのため、J.フロントリテイリング(JFR)は、グループの中核事業である百貨店事業を再生させるため、“マーケティング力の強化”と“業務運営体制の革新”を中心に、「新しい百貨店ビジネスモデルの構築」に本格的に取り組んでいます。


 当社が目指す百貨店イメージは、百貨店の原点である“大衆性”と“ライフスタイル提案”を基本にした「新しい運営モデルによる“都市型ライフスタイルストア”の創造」です。そのため、今までの「マーチャンダイジングを中心とした小売業型」発想から、「マーケティングを基軸にした商業施設としての店舗の魅力化」に業務運営の重点を移し、次の3つの重要課題に取り組んでいます。


 1つは、「マーケティング力の強化と店舗戦略の確立」です。
 2008年度下期から、JFRのマーケティング企画推進室を拡充して、百貨店事業を中心に、市場と顧客変化への基本的な対応策の立案機能の強化を図っています。
 特に、最大の課題である各地域ごとの店舗競争力を強化するため、各店舗と協働して地域ごとのきめ細かいエリアマーケティング分析に基づいた店舗戦略策定への取り組みを急いでいます。現在、大丸は神戸店・心斎橋店、松坂屋は名古屋店・上野店からスタートし、エリアマーケティング分析による市場戦略と競争戦略に基づいた店舗戦略の策定が進んでおり、順次、その他の店舗に拡大していく予定です。
 また、顧客の購買チャネルの選択肢が多様化する中にあって、Web販売と店頭販売の相乗効果を狙ったClick&Mortarビジネスを強化し、店頭で取り込めていない顧客と店頭で販売されていない商品売上の拡大を図ります。
 併せて、競合がますます激化する中、顔の見える自社カード顧客基盤の拡大とその効果的なCRM活動は営業戦略上、極めて重要です。店舗の魅力化による顧客基盤の強化に向け、全社的なキャンペーンなどを通じ、店頭を中心にカード顧客の拡大に取り組んでいきます。


 2つ目は、「マーケット対応力の強化とローコスト経営の両立を目指した店舗運営オペレーション体制の確立」です。
 現在、大丸を中心に、店頭売場を中心とする“新しい業務運営体制の確立”に取り組んでいます。新体制では、売場運営形態を「ショップ運営」と「自主運営」の2つに峻別し、それぞれに異なる特性に基づいた運営を行ないます。
 ショップ運営を中心に2つの売場運営形態それぞれの長所を活かしながら、新しい顧客ニーズに対応した売場分類に基づいて、顧客に注目され支持される最適なブランドやショップの導入とミックス、スクラップ&ビルドによる新陳代謝を加速するなど、新しいマーケットへの対応を強化し、常に商業施設としての魅力の維持・向上を図ります。
既に、具体的な取り組みの一環として、お客様からのご要望が特に強い中低価格帯商品の強化を図るため、ショップ運営売場では、既存のお取引先にとらわれない新規ショップの導入を始めており、店舗戦略をベースに、今後各店において拡大を図っていきます。
 同時に、こうした施策の実行を支える取り組みとして、高度な専門能力を持った人材の育成と効率的な運営のための業務手順のマニュアル化、業務の効率化を支援する情報システムの充実などを進めていきます。


 3つ目は、「人的生産性の向上を目指したローコスト・高効率経営の推進」です。
 今後、新百貨店モデルへの転換を進めることによって、当社の売場運営マネジメントは大きく変わります。
 1つは、売上志向から利益志向への転換です。売上高がかつての右肩上がりの時代は売上の最大化を目標にするのが合理的でしたが、売上が縮小する今の時代は営業担当のモチベーション向上を図る点においても、売上から利益志向への転換が必要です。
 2つ目は、業務組織と要員構造の抜本的見直しによる人的生産性の向上です。今回の新しい取組みによる売場の運営業務の見直しと連動させ、外商・総務・人事・経理などの事務サポート部門を含む全社レベルでの業務運営・組織・要員計画などを抜本的に見直す予定です。そして、意識と働き方の変革を伴う少数精鋭による生産性の高い百貨店運営を目指し、更なるローコスト運営の追求を進めてまいります。


 以上の3つの経営課題に加えて、経営構造改革の大きな柱の1つになるのが、大丸と松坂屋の1社体制への移行です。当初の予定より1年前倒しして、2010年3月に百貨店事業を1社体制にします。これによって経営執行体制が一本化され、意思決定がスピードアップすると共に、組織機能の重複を大きく減らし、高効率とローコストの経営を目指します。
 また、現在、両社の本社商品部門の統合を進めており、2009年3月に婦人雑貨子供服部門を統合しましたが、同9月には婦人服・紳士服飾・食品部門、2010年3月には残る住文化用品・呉服・美術・宝飾部門の統合が完了する予定です。


 2009年度は、かつて経験したことのない極めて厳しい経営環境になることを前提に経営を行います。企業の生き残りと再生に向けた「新しい百貨店ビジネスモデルの構築」に全力を傾けると共に、今年度最大の課題である「売上高の縮小を最小限に止めること、経費の抜本的な圧縮を図ること」に注力していきます。併せて、こうした厳しい時代にこそ、お客様や株主をはじめとする各ステークホルダーの皆様のご期待に応えられる高質経営を目指し、企業の社会的責任の遂行を果たしてまいります。


2009年5月