- トップメッセージ

このたびの東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、皆様の安全と、一日も早い復興をお祈り申し上げます。
J. フロント リテイリングは、中核事業である百貨店事業の再生に向け、「新百貨店モデル」の構築に取り組んでいます。新百貨店モデルの重要課題は、「マーケット対応力の強化」と、「高効率オペレーション構造への転換」の2つです。
最近の消費者マーケットにおける顕著かつ最も重要な変化は、「ライフスタイルのカジュアル化」と「節約志向・価格志向」です。この2つの大きな変化は、経済のグローバル化とともに進展し、リーマンショックでその流れは一気に加速しました。しかし、これまでの百貨店は、対象顧客は中高年の女性、高所得者層中心、グレードは高級・高額、ファッションテイストはオーセンティック・ドレスアップという、従来からのブランド構成や品揃えを継続したために、この大きなマーケット変化に対応できず、その結果、自ら対象とするマーケットと顧客層の幅を狭めるとともに、同質化の傾向を強めました。
当社は、「新百貨店モデル」において、この「ライフスタイルのカジュアル化」「節約志向・価格志向」という大きなマーケット変化への適合と、対象マーケットおよび顧客層の幅の拡大に取り組んでいます。具体的には、各店舗ごとに徹底した地域マーケットの分析を行い、それぞれの地域における競争力強化を目指した店舗戦略を策定し、この店舗戦略を基本に、商品構成やブランド構成、販売サービスなどの抜本的見直しを進めています。
対象マーケットを拡大するためには、商品構成において、従来から百貨店が得意としてきた中級から超高級までの価格ゾーンを維持しながら、今の消費者が強く求める、バリュー感のある、百貨店としての低価格から中価格の商品の充実をはかる必要があります。当社は商品政策の基本を、「高感度・高品質・グッドテイスト」に置き、低・中価格の商品の充実をはかる際には、単に価格が安い商品ではなく、百貨店としてのレベルを維持しながらリーズナブルな価格の商品の導入を進めてまいります。
また、対象とする顧客層を広げるため、既存の百貨店があまり力を入れてこなかったヤング向けの売場の開発にも取り組んでおり、お客様が百貨店に新しく期待されるヤング向けブランドやショップを、百貨店としての店舗環境・高質イメージ・行き届いたサービスを付加して提供してまいります。
当社が主力とする5万平方メートルを超える都心の大型店舗では、これまでの高額・高級品に過度に偏った品揃えを修正することにより、バリュー感の高い手頃な価格の商品から高級品まで、バランスよく幅広いブランド構成・品揃えが可能となります。併せて、これまでの中高年のお客様への対応を維持向上させながら、ヤングから中高齢層まで、バランスよく幅広い対応が十分に可能です。
これまでの取り組みの成果は最近の入店客数の増加という形で明確に現れており、今までショッピングセンターや駅ビルなど他の業態に流れていたお客様が、大丸・松坂屋の店舗にご来店いただいていると考えています。お客様の「節約志向・価格志向」が続き、お買上単価が減少する中、入店客数を増やすとともに、品揃えの幅広さと高質なサービスという他の業態に無い百貨店の強みを活かし、ご来店いただいたお客さま一人当たりのお買上点数を増やすことが、売上の増加につながると考えております。
また、当社は、マーケットの変化に継続的かつ機敏に対応していくために、今まで百貨店とは取引の無かった新たなお取引先の開拓や、既存のお取引先との協業による新規ブランドや商品の開発などに取り組んでいます。これに加えて、婦人服・紳士服といった従来の商品分類別の枠組みや組織では対応ができなかったお客様のご要望にお応えするため、コト・サービスを含む新規商材や新しいお取引先の情報収集分析等を担当するマーケティング専門部署を設置して、今までの百貨店にはない、新しい売場の開発にも取り組んでまいります。
一方、百貨店が仕入から販売までの責任を負う「自主運営売場」については、収益上の視点に加え、競争戦略上からも、他業態に対する百貨店独自の強みとして、また、他の百貨店に対する差別化戦略として、さらに強化してまいります。
高効率オペレーション構造への転換につきましては、引き続き要員構造の抜本的改革を中心に推進いたします。売場運営形態別のオペレーションシステムの確立とそれに基づく効率的な要員配置や人材育成などの推進に加え、これまでは各店が個別に抱えていた事務部門を、関西・首都圏など地区ごとに整理統合し、さらなる業務の効率化を進めます。その他、あらゆる経費について聖域を設けず抜本的に見直し、さらに一段のコストコントロール策を実施いたします。
以上に加えて、これまでの百貨店事業に過度に軸足を置いた経営から、既存関連事業の強化や、ウェブ通販をはじめとする新規成長分野への取り組み強化など、グループ全体としてバランスよく収益向上と成長をはかるべく、事業構造の変革にも取り組んでまいります。このため、経営資源につきましても、百貨店事業に偏るのではなく、関連事業にもバランスよく投入いたします。
また、本年3月に、雑貨販売の「プラザ」や化粧品事業、通販事業、レストラン・洋菓子事業を運営する株式会社スタイリングライフ・ホールディングス社を持分法関連会社化いたしましたが、今後もアライアンスやM&Aにも取り組んでいきたいと考えています。
今回の大震災は、日本にとって史上最大の危機の一つであり、この状況において当社に課された一番の使命は、一企業として日本経済の早期の回復に貢献することであると考えています。J. フロント リテイリングは、今回の危機をさらなる変革を進める契機と前向きに受け止め、新百貨店モデルの確立をはじめとする経営改革をより一層加速させて具体的な成果を積み上げ、企業価値の向上につなげてまいります。
2011年6月
