銀座再開発プロジェクト

メンバー

これまでにない商業施設を発明する、
銀座の街に進化をもたらすために
~「GINZA SIX」を完成まで導いた4人の肖像~

2017年4月、東京の商業の中心地である銀座6丁目の地に、新たなランドマークとなるシンボリックな施設が登場する。その名も「GINZA SIX(ギンザシックス)」。かつて松坂屋銀座店があった銀座中央通りに面する一角、および周辺街区を再開発することで、地下6階、地上13階、延べ床面積約14万8700㎡の大型複合施設が誕生することになった。

約4,000㎡の屋上庭園「GINZA SIXガーデン」、7層にわたるオフィスフロア、観世能楽堂、ツーリストサービスセンターなど、実に多彩な機能を持つGINZA SIXにあって、“顔”となるのは銀座エリア最大の施設面積約4万7000㎡を誇る大型商業施設にほかならない。

“百貨店”ではない。一般的にいうところの“ショッピングセンター”である。大丸と松坂屋という二つの伝統的な百貨店をルーツに持つJ.フロントリテイリングは、大胆にも「百貨店はやらない」という旗を掲げて、銀座という地に革新をもたらそうとしている。

いかにしてこの戦略が生まれ、どのようにかじを切って完成までに導かれたのか――プロジェクトの中枢にいる4人の社員に聞いてみた。

  • 石原 拓磨

    石原 拓磨

    2012年入社
    大学院工学研究科
    ビジネスエンジニアリング専攻修了

  • 冨 さやか

    冨 さやか

    2003年入社
    文学部英文学科卒

  • 大西 則好

    大西 則好

    2003年入社
    文学部人間行動学科卒

  • 西岡 和也

    西岡 和也

    2008年入社
    商学部商学科卒

※掲載内容は取材当時の所属部署・職種に拠る

4社合同による画期的なプロジェクトが始動する

石原は突然の抜てきに、ただただ驚くばかりだった。入社2年目になった頃、会社が命運をかけて立ち上げたGINZA SIXのプロジェクトチームに参画することになったのだ。都市計画を学んできた石原は、都市の中心地にある百貨店のポテンシャルを生かした街づくりに挑みたいからとJ.フロントリテイリングへの道を選んだ。いつかは開発案件を手がけてみたいとは思っていたものの、百貨店とは何たるかを知らなかった1年目は、販売の最前線で一つひとつの業務を覚えるのに精いっぱいだった。「GINZA SIXのチームに声をかけられたのは光栄でしたが、夢がかなったというよりは、正直、このタイミングで何をしたらいいのかが全くわからないとの感覚の方が大きかったですね。それでも銀座という立地でこれほど大規模な開発を行うチャンスは、おそらく2度とやってこないからと、戸惑いながらも思い切って飛び込んでみました」と石原は当時を振り返る。

メンバー

GINZA SIXは、実に多種多様な革新を盛り込んだプロジェクトだが、もっとも大きなポイントは、4社共同で推進している点に尽きる。常に常識を越える新しさに挑戦し続けてきた松坂屋銀座店のDNAを受け継ぎながら、これまでにない全く新しい商業施設の創造に向けて、JFRグループのあらゆる力を結集し、事業パートナーである森ビル株式会社、L Real Estate、住友商事株式会社と一体となって進めていくことになったのだ。
前例がない画期的な取り組みだからこそ、常識にとらわれない視点が必要となる。若手の石原が抜てきされたのも、既存の百貨店が守ってきたものを根本的に変えていきたいとの思いの一端が現れた結果かもしれない。

いよいよ商業施設のコンセプトを具体的に決めていく段階となったのが、開業予定からさかのぼること4年前の2013年春ごろ。この段階に至るまではビジネスの基盤を整えるフェーズであり、各社から選ばれた精鋭たちが担っていた。石原はこのときにメンバーに加わり、試行錯誤を繰り返していきながら、精鋭たちに追いつこうとしていた。

石原 拓磨

90年の伝統を脱ぎ去り、百貨店ではない新しい形へ

これまでにない商業施設を発明する。そんな革新的なコンセプトは、早い段階で生まれていたと石原は語る。
「ごく初期段階では同じ建物内で、商業施設を別々に展開する案もありました。しかしながら、最終的には一つの商業施設として最大限に魅力を高めていくことが、お客様に喜んでいただけるという結論に自然と落ち着きました」。

GINZA SIX

銀座「中央通り」から見たGINZA SIX外観イメージ

近年、百貨店という業態を変化させて異なる施設を造るケースは、決してレアなケースではなくなっている。しかし、銀座6丁目の旧松坂屋銀座店は、銀座最古の百貨店として1924年に国内初の全館土足入場可の営業を開始して以来、松坂屋銀座店は実に90年近く、銀座の街に彩りを添えてきた。銀座の主役の一つが、歴史を塗り替えて異なる方向に進むとなると、インパクトはあまりにも大きい。

メンバー

コンセプトが決まった当初、大丸梅田店の増床を手がけていた大西は、この決定を前向きに受け止めていた。
「思いもよらぬ方向かもしれませんが、“当社なら有り得る”と感じました。実際、梅田の増床や大丸東京店のリニューアルなども、今までの概念を打ち破るようなものでしたから。元来、ドラスチックな改革を行うのに抵抗がない会社なんですよね」。
かくいう大西は2014年9月にGINZA SIXに加わり、主にテナントのリーシングを任された。最終的には約240のブランドが集結することになったが、ここに至るまで1300以上のブランドを検討してきたという。候補を選定し、実際にアプローチをかけて、条件交渉を行い、契約締結まで持っていく――賃貸借のリーシング経験はなかったが、大丸梅田店で増床のプランニングや、本社でブランド導入交渉を担当していたこともあってイメージはしやすかった。

大西 則好

だが、GINZA SIXには大きな壁があった。大西が笑って受け止めた“百貨店ではない”という事実はあまりにも大きくのしかかってきた。
「私は主にファッションを担当していたのですが、百貨店ならばワンフロアを婦人服など特定のカテゴリで構成し、深くターゲットを絞り込んでいくのに対して、GINZA SIXの場合、ワンフロアにファッション以外にもさまざまなカテゴリの店を混在させ、広くターゲットのライフスタイルをカバーしていくことになります。さまざまなカテゴリの情報を仕入れ、それを編集、提案するのが難しかったですね」。
ただ、テナントの反応はすこぶるよかった。銀座6丁目の地に新しく建つ商業施設というだけで、普段はなかなか懐に入り込めないラグジュアリーブランドも、興味を持って話を聞いてくれる。最終的には約半数の店舗が「旗艦店」となり、国内・銀座初出店や新業態に取り組む店舗も相当数を占めた。自分たちの手掛けているプロジェクトが、いかに世の中から、商業のプロたちから大きく期待されているのかを、大西たちはひしひしと実感していく。

メンバー

2014年春以降は石原も大西と同じリーシングチームに所属し、主にコスメやジュエリー、ライフスタイルなどにかかわる店舗と交渉をしていった。リーシングをしていく中で石原自身が感じたのは、4社の異なる文化の違いだ。
「周囲の街との融和性を徹底して考えるか、経済条件を守るか、マーチャンダイジングを優先するのか。何に重点を置くのかが各社で全く異なっていました。ただ、意味なく衝突をするようなことはありませんでした。確かに意見の調整が必要だったものの、時間を掛けて議論を重ねて、風通しのよい環境が自然とできあがっていきましたね」。
百貨店としてのこだわりを取り入れなかったところもあるが、百貨店だからこそ実現できたリーシングもあった。例えば、食品専門フロア。ちまたのショッピングセンターで食と言えば、スーパーなどに丸ごと任せるケースが多いが、百貨店の経験を生かすことで複数のテナントを誘致した魅力的なフロア作りを実現した。
「ただ、エリア競合などを考慮して、百貨店に必須だった生鮮食品も導入しませんでしたし、かなり思い切って取捨選択しています」(大西)。変えていくもの。残していくもの。さまざまな選択が、GINZA SIXでは行われていった。

上質なサービスの構築に挑み続ける

GINZA SIXのコンセプトは、「Life At Its Best 最高に満たされたくらし」である。最先端のスタイルと真のラグジュアリーを最高の形で提供するべく、確かな施設づくりが行われてきた。店舗ラインアップはもちろんのこと、サービスにおいても最高峰を目指してきたが、2014年3月にプロジェクトに参画した冨は、まさに施設全体のサービスの像を描いてきた一人である。
冨は入社以来、店頭販売や販促などでキャリアを積んできた。サービスに関して専門的な知見を持ち合わせているわけではなかったからこそ、最初は世の中の大型商業施設にどのようなサービスが存在するかを浮き彫りにしていくところに注力した。全国各地、時には海外の大型商業施設に足を延ばして、インフォメーションカウンター、Wi-Fiサービス、館内放送の在り方などを事細かにチェックし、GINZA SIXでは“何をやるべきなのか”を絞り込んでいったという。

冨 さやか

「各施設を回ったおかげで、私のスマートフォンの写真フォルダはトイレだらけになってしまいました(笑)。トイレの良しあしで施設が決まる、と言われるくらい重要な部分なので、入念にチェックしていったんです。こうした検証を重ねることで、GINZA SIXではホテルライクな内装のトイレを採用するに至りました」。

百貨店が起源にある施設ならではのサービス「LOUNGE SIX(ラウンジ シックス)」も導入することになった。上顧客のための特別なラウンジであり、多言語対応のコンシェルジュが常駐して、お客様に対するキメ細かなサービスを提供していく。百貨店では外商顧客をおもてなしするノウハウがあるが、ショッピングセンターでありながら、施設とお客様とのより密接な関係を築くために特別なラウンジで、コンシェルジュ機能を中心としたOne to Oneのプレミアムサービスを提供する。LOUNGE SIX内だけの厳選されたメニューやオリジナルメニューを提供したり、パーソナルスタイリストサービスを提供したりと、斬新な視点でのサービスを付加している。駐車場に入る前に係員が車を預かり、お出迎えからお見送りまでをサポートする「バレーパーキング」も銀座エリアの商業施設として初めて導入する。

GINZA SIX GINZA SIX

GINZA SIXで提供するサービスは、百貨店出身の冨たちだけでつくりあげてきたわけではない。4社共同プロジェクトだからこそ、さまざまな角度の意見を融合させて、よりレベルの高い領域に導くことができた。
「4社共同で外部の有識者を招いて意見をヒアリングし、具体的なサービス施策に落とし込むようにしてきました。将来的なユーザーとなり得るVIP層から直接、必要なサービスに関して意見をもらえたことは、貴重な財産となりました」(冨)。
GINZA SIXの随所に張り巡らされている斬新性は、まさに4社共同プロジェクトだからこそなし得た業なのである。

メンバー

GINZA SIXの魅力を外部に発信するために

西岡 和也

4人の中では最後となる2016年春にプロジェクトに加わった西岡は、大丸心斎橋店で食品やファッション売場を経験後、4年目の1年間、全日制のファッションスクールに通って学びを深めたという異色の経歴を持つ。5年目からは本社で、全社のプロモーション計画などを策定するという大役も担った。GINZA SIXではサービス企画部に所属。顧客管理システムやWi-Fi環境の整備などに取り組むとともに、施設全体の全容を初めて大々的に世界に伝えていくGINZA SIXのウェブサイトの立ち上げにも関わった。「施設が完成していないこともあり、サイト上で見せられるコンテンツには限りがありました。その中でも事業の先進性、施設の圧倒的スケールをどのように伝えていくのかに苦心しましたね。

当初はデザイン的に派手に展開する方法も考えましたが、最終的には事業に参画してくださったプロフェッショナルたちを前面に立たせることで、GINZA SIX のすごみを力強く、そしてシンプルに伝えていく手法を選択しました」。プロフェッショナル一人ひとりの写真撮影やインタビューなども行ったことから、スケジュール調整には悪戦苦闘した。それでもデザイン上の小手先のテクニックに頼らず、各人の伝えたいことや思いをストレートに表現したことで、GINZA SIXの魅力が端的に伝わるサイトに仕上がったと高評価を得るに至った。

そんな西岡が抱えている案件のひとつに、スマートフォン向けの専用アプリの開発がある。この進め方がまさに4社共同で展開するGINZA SIXの文化を象徴している。通常、こうしたアプリは手間の軽減も考えて一つの会社で作るのが一般的だが、今回はシステム開発とデザイン設計をそれぞれ別会社に依頼したのである。4社共同プロジェクトで効果を得た経験から、良いものをミックスさせていけば、相乗効果が得られるとの期待を込めての決断だった。「私が2社の間に立って、調整していく役割を担っています。どちらの会社もアプリ開発に対して熱い思いがあるので、結論を導き出すのは大変な作業ではあります。しかし、全員がこだわってアプリに向き合っているぶん、最終的にはいいものができるとの確かな手応えを感じています」。異なる4社が、異なる意見をぶつけ合うことで、GINZA SIXは魅力あふれる施設となった。クオリティーを求めるという意味では弱点を補って余りあるプラス効果を呼び込むことにつながっている。アプリでの“複数社共同”プロジェクトからも、きっと新しい潮流が誕生することだろう。

メンバー GINZA SIX

4人が描く完成後の未来図

石原以外の3人は大丸松坂屋で長きにわたるキャリアを積んできた。今までにない新しい施設だからこそ、当然、過去の経験では通用しないものは多々あった。「百貨店という枠の中では、新しいことをするにしても今までのおつきあいの中で行うというのがほとんど。今回はすべてがゼロからのスタートで、接客マニュアルなども新しく作っていかねばなりませんでした。苦労は多かったですが、おかげで知見がぐっと広がりました」(冨)。
完成に近づいた2016年末、大西はプロジェクトに参画した直後の2年前を思い出していた。異なる4社のメンバーと顔を合わせたとき、一体どういうものができるのかも想像がつかなかった。それが2016年10月26日の記者発表で、大勢の人の注目を浴び、世間でもニュースとして流れていくまでになった。記者発表の日は感慨深い思いに包まれたという。「銀座の一等地で、このような大スケールの街づくりができるのは非常に喜びが大きいですね。ただ、今のままにとどまるつもりはありません。先日、東南アジア各国に出張に出掛けた際、はるかに規模の大きなショッピングセンターを目の当たりにしてきました。GINZA SIXは海外施設と比べて何に勝り、何が違うのか――これからその点を浮き彫りにして、よりよい施設づくりに役立てていくつもりです」。

メンバー

GINZA SIXがオープンした後、メンバーたちはその運営にしばらく携わっていくことになる。特に早期にプロジェクトに参画した石原は、できるだけ長くGINXA SIXに関わっていきたいと熱望している。「私は他の経験もほとんどないまま今回のプロジェクトに入りましたが、プランニングからリーシング、テナントマネジメント、オペレーションまで一気通貫で取り組んできたことで、新しい知識や経験をどんどん自分の中に取り込むことができました。今後もGINZA SIXを通して、ノウハウの一つひとつを自分の財産として蓄えていきたいと思っています」。
無論、今後はGINZA SIXの“次”という話も出てくるだろう。4人が得た百貨店の枠を飛び越えた知見は、必ず新たな可能性を開拓する原動力となるはずだ。「百貨店という既存の枠組みでしか考えられていない状況は、確かに存在しています。私自身、GINZA SIXで学んだ人脈や経験を生かして、新しい物事やチャレンジを生み出せる場で働き、もっとお客様に喜んでもらえるビジネスモデルや仕組みを作りたいと思っています」(西岡)。銀座という街に変革をもたらしたGINZA SIXは、J.フロントリテイリングという会社そのものをも、まだ見ぬ頂に導こうとしている。

メンバー

学生へのメッセージ

石原 拓磨

今、当社では若い力を積極的に登用して、変革をもたらそうとしています。私もその期待に応えるべく、会社を変えていきたいですし、これから入社するみなさんも一緒になって変化に挑戦していってほしいと思います。

冨 さやか

自分のやりたいことと、実際にできること。その二つが一致して働くことができれば、とても幸せだと思います。当社は個々のやりたいことに耳を傾けてくれる会社です。だからこそ、「何を持って当社を志望したのか」との思いを持って選考に臨んでほしいと思います。

大西 則好

百貨店業界の現在は、正直に言って安定をしているわけではありません。現状打破が必須な業態です。その中にあって当社は、まさに業界そのものを変えようと前を向いて行動をしてきました。将来の後輩たちにも大きな視点で仕事に臨んでほしいと思います。

西岡 和也

過去、全社的な販促活動に5年目程度の私が携わったのは前例のないことでした。石原が2年目でこのプロジェクトに抜てきされたのも同様。壁を乗り越えて、さまざまなことにチャレンジできるチャンスがある会社ですし、またそういう場で頑張っていきたいと思える人に入社してほしいですね。

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