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トップメッセージ

Top Message

当社グループは、コロナ危機からの完全復活と再成長を目指した新たな中期経営計画を2021年度からスタートさせました。初年度の2021年度は、想定以上にコロナ影響が長期化したことにより、投資の抑制や経営構造改革の加速など、「攻め」よりも「守り」を重視した取り組みを進めました。

今年度に入り、感染者数もようやく落ち着きを見せてきたとは言え、依然高止まりが続いています。今後も感染拡大の波が再び押し寄せる可能性は充分にあるものと想定しておくべきでしょう。我々に求められるのは、アフター・コロナをただ待つのではなく、ウイズ・コロナを前提とした変革への覚悟です。一方では、地政学リスクの高まりや世界的なインフレ急進への懸念など新たな先行き不透明な要素も加わり、経営環境は決して楽観できる状況にはありません。

しかしながら、我々が完全復活を果たし、さらに再成長につなげるためには、攻めに転じる決断、そのタイミングをはかることが極めて重要であると考えます。成長の芽はどこにあるのか、中長期的なリターンをどこに求めるのか。非連続かつ飛躍的な成長を目指す強固な基盤構築には、明確な戦略に基づく相応の準備が不可欠です。そうした見極めを適時、適切に進めて行かなければなりません。

これらを踏まえた中期経営計画2年目となる今年度の位置づけは“ギア・チェンジ”です。コロナ危機対応の「守り」重視から、トップライン成長を目指した「攻め」へとマインドセットを変え、具体的なアクションと成果につなげることにより、持続的な成長を可能にする強固な経営基盤を構築していきます。

まず、完全復活に向けては、コロナ禍で特に打撃を受けた中核事業の百貨店、SCにおいてビジネスモデル転換の加速をはかります。コロナで炙り出された脆弱性、すなわちリアル店舗に過度に依存した事業構造からの脱却に向け、リアルとデジタルの融合をはかるとともに、オンラインでは実現できないリアルならではの圧倒的な付加価値向上に取り組みます。そのため、リアル店舗の魅力化とデジタル対応強化に向けた投資を積極化します。

同時に、急激な環境変化への対応力強化に向けた経営構造改革を着実に推進します。まず、損益分岐点の引き下げをはかるべく、ビジネスモデル転換を基軸とした要員構造改革や経費構造改革に取り組み、今中期経営計画において固定費100億円以上の圧縮を実現します。併せて、グループ事業の見極めや資産売却によるバランスシートの改善にも引き続き取り組みます。

さらに、再成長に向けては、ホールディングスに「事業ポートフォリオ変革推進部」「CRE企画部」「デジタル推進部」の3部門を新たに設置し、推進体制を強化します。基幹人財にはパルコや外部採用も積極的に登用し、多様性を活かしたこれまでにない発想を引き出し、非連続な成長を目指していきます。その実現に向け、戦略投資枠100億円も活用し、アライアンスやM&A、CVCやコンテンツマネジメントファンドなどを通じて既存事業のイノベーションや新規事業の開発に取り組みます。

一方、コロナ禍はサステナビリティ経営への思いをより強くするきっかけになったことも事実です。コロナ禍の1年目では、当社グループの売上は3700億円が消失しました。我々の存在価値とは何なのか。社会に必要とされるとはどういうことなのか。まさに本質的な問いを投げかけられたものと感じています。お客様をはじめ、従業員やお取引先様、社会とのつながりの大切さを改めて考える契機となりました。

我々がサステナブルであるためには、長期にわたってお客様、マーケットから求められ続ける存在でなければなりません。それは、当社の先義後利、あるいは諸悪莫作 衆善奉行といった社是の実践そのものであると考えています。

企業価値は、財務資本だけではなく、人的資本や社会関係資本、あるいは自然資本などさまざまな資本を活用することによって創出される価値の総体です。なかでも企業価値を今後決定づけていく中核になるのは人的資本であると強く認識しています。そうしたことも含め、中長期的な価値創造につながると判断する資本への投資は積極的に行っていく考えです。

我々が社会における存在意義を再認識し、サプライチェーンを巻き込んだ環境、社会へのリスク低減にコミットするとともに、改めて「価値創造」ということに強いこだわりを持ち、社会価値と経済価値の両立をはかる真の「CSV実現」に向け、ギアを上げて変革に取り組んでいきます。

2022年6月

J.フロント リテイリング株式会社
取締役兼代表執行役社長

経営方針