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TCFD/TNFD統合開示

TCFD/TNFD Integrated Disclosure

ネットゼロ・ネイチャーポジティブを目指して

私たちのくらしや、あらゆる事業活動は、食料や水、気候の安定など、多様な生物が関わりあう生態系からの恵みによって支えられています。しかしながら、地球温暖化による気候変動の影響や自然環境の悪化により、動物や植物の多様性がこれまでにない速さで失われつつあり、現在はもちろんのこと、将来世代にわたって生態系サービスを享受できなくなる危機にさらされています。

当社グループは、気候変動と生物多様性損失は互いに切り離せない課題であり、中長期にわたって当社事業に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、マテリアリティ(経営上の重要課題)に「環境とともに生きる社会をつくる」を掲げています。

主力事業である百貨店やショッピングセンターなどのリテール事業において、お取引先様やお客様、また地域社会など様々なステークホルダーとのつながりを生かしながら、環境配慮型商品の調達や自然との共生を意識したライフスタイルの提案、環境性能の高い店舗開発等に取り組むことで、2050年までのバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量ネットゼロ※1、ネイチャーポジティブ※2に向けた取り組みを包括的に推進していきます。

※1 温室効果ガス排出量を徹底して削減し、残りの排出量について、森林吸収やCCS(CO2の回収・貯留)等による除去量を差し引いて実質ゼロにすること

※2 ネイチャーポジティブ(自然再興)は、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」という考え方を指し、2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の2030年、2050年目標にも反映された概念

環境方針
当社グループは、環境関連課題の解決及び環境との共生に向けた取り組みを推進するための方針として、2018年に「エコビジョン」を制定しました。2024年5月、自然関連課題への取り組みを全社として推進するため、これを改定し、新たな重点取り組みに生物多様性を加えました。

ネットゼロに向けた取り組みの方向性

TCFD/TNFD統合開示

当社グループは、2019年5月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。また、2023年11月にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の理念に賛同しTNFDフォーラムに参画、2024年10月にはTNFDアダプターに登録しました。
当社グループは、両提言の開示フレームワークに基づき、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの開示項目に沿った情報を開示するとともに、気候変動と生物多様性損失とは切り離せない課題であるとの認識に立ち、包括的な解決を目指して、取り組みを進めています。
また、気候変動と生物多様性のトレードオフも考慮し、気候関連および自然関連課題への対応について、統合的な開示を進めています。

4つの開示項目と具体的な開示内容

基礎項目

概要

具体的な開示内容

ガバナンス

気候/自然関連リスク・機会に関する組織のガバナンス

a) 取締役会が気候/自然関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象
b) 経営者の気候/自然関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス、モニタリング方法

リスク管理

気候/自然関連リスク・機会の特定・評価・管理のプロセス

a) 気候/自然関連リスク・機会の特定・評価プロセスの詳細
b) 重要な気候/自然関連リスク・機会の管理プロセスの詳細
c) 全社リスク管理の仕組みへの統合状況

戦略

気候/自然関連リスク・機会とそれによる事業・戦略・財務への影響

a) 自然への依存と影響
b) LEAP※アプローチを考慮した自然関連課題等の評価
c) 短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
d) リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
e) 関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス
※LEAP : Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズ

指標と目標

気候/自然関連リスク・機会の評価・管理に用いる指標と目標

a) 気候/自然関連リスク・機会の管理に用いる指標
b) 温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)・再エネ率

(参照)気候関連財務情報開示タスクフォース、「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言(最終版)」、2017年

ガバナンス

(a) 取締役会が気候/自然関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象

当社グループは、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、事業と関連性の高い環境関連課題(気候/自然関連リスク・機会を含む。以下同様)への対応や、課題解決につながる取り組みを事業戦略に反映し、業務執行の最高意思決定機関であるグループ経営会議で審議・承認しています。また、代表執行役社長の諮問機関としてサステナビリティ委員会(年2回以上開催)を設置し、当社の事業の持続的成長に資する戦略や、環境関連課題へのリスク対応等持続可能な社会の実現に向けて企業として取り組みが必要な事項について議論するとともに、グループ全体の取り組みの進捗モニタリングを行っています。そのうえで、サステナビリティに関する具体的な取り組み方針や実行計画など重要な事項については、グループ経営会議で審議・承認しています。グループ経営会議で承認された事項は、事業会社社長が出席する会議を通じて全事業会社に共有されます。
一方、取締役会(毎月開催)は、グループ経営会議で審議・承認された内容およびサステナビリティ委員会で協議された内容の報告を受け、目標設定、対応方針、実行計画等についての監督を行います。

JFRグループ 気候/自然関連課題マネジメント体制

取締役のスキルマトリックス

当社グループは、取締役候補者の選任にあたり、取締役に期待する専門性および経験等についてスキルマトリックスで明確にしており、その項目の一つに「環境」を掲げています。事業活動を通じた環境関連課題の解決に向けた中長期目標を含む環境計画に対し、具体的な行動計画や定期的なレビュー、継続的改善の取り組み状況を適切に監督できる取締役を選任することで、環境関連課題に対する取り組みの実効性を高めています。

※スキルマトリックス

(b) 経営者の気候/自然関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス、モニタリング方法

代表執行役社長は、グループ経営会議の長を務めると同時に、直轄の諮問委員会であるリスクマネジメント委員会及びサステナビリティ委員会の委員長も務め、環境関連課題に係る業務執行の最終責任を負っています。グループ経営会議で審議・承認された内容及びサステナビリティ委員会で協議された内容は、最終的に取締役会へ報告されています。

非財務指標を取り入れた役員報酬制度

当社グループは、役員報酬制度における業績連動株式報酬を決定する非財務指標の一つとして、2021年度から「Scope1・2温室効果ガス排出量削減率」を設定しています。これらは、中期経営計画のKPIとも連動しており、環境関連課題に対する目標達成に向けた執行役の責任を明確化するとともに、サステナビリティ経営を実現・推進するためのインセンティブとして機能するようにしています。

※役員報酬制度

JFRグループの環境マネジメントにおける会議体及び実行主体と役割

会議体及び実行主体

役割

開催頻度

会議体

取締役会

業務執行側において審議・承認された環境関連課題に関する目標設定および取り組みの進捗の監督を行う。

毎月

グループ経営会議

業務執行の最高意思決定機関として、全社的な経営に係る方針や施策について審議・承認する。リスクマネジメント委員会及びサステナビリティ委員会で論議された環境関連課題を含む包括的なリスク・機会に対する全社的な経営方針等についても審議・承認を行う。承認事項は取締役会へ報告される。

毎週

リスクマネジメント委員会

包括的なリスク・機会の特定、評価および対応策等について、審議を行うとともに、リスク対応のモニタリングを実施する。環境関連課題リスク・機会についても、全社リスク管理の仕組みへ統合し、本委員会で他のリスクと合わせて管理する。委員会での審議内容は取締役会へ報告される。

年2回以上

サステナビリティ委員会

当社の事業の持続的成長に資する戦略や、当社グループの環境関連課題へのリスク対応等持続可能な社会の実現に向けて、企業として取り組みが必要な事項について論議するとともに、グループ全体の取り組みの進捗モニタリングを行う。また、環境関連課題に精通した有識者との対話も行う。協議内容は取締役会へ報告される。

年2回以上

代表執行役社長

グループ経営会議の長を務めると同時に、リスクマネジメント委員会およびサステナビリティ委員会の委員長を務める。環境課題リスク・機会の特定・評価・対応、環境関連課題解決に向けたグループ全体の取り組み推進などについて業務執行の最終責任を負う。

 

実行主体

事業会社

グループ経営会議での承認事項、リスクマネジメント委員会およびサステナビリティ委員会での協議内容を受け、各事業会社における環境関連課題への具体的施策を計画・実行するとともに、その進捗状況を当社のリスクマネジメント委員会およびサステナビリティ委員会へ報告する。

 

サステナビリティ推進担当
(コーポレートコミュニケーション室)

サステナビリティ経営を推進するためのグループ方針等について立案・提案を行う。環境関連課題含むリスク及び機会に関する情報を収集するとともに、中長期的な取り組みの方向性等を立案し、グループ経営会議やサステナビリティ委員会へ報告する。

 

サステナビリティ委員会における気候/自然に関する主な議題

2024年度
(2回)

●マテリアリティに関する従業員の自分ごと化
●グループ全体のKPI進捗報告
●外部講師講演「中長期的な企業価値向上と非財務活動の関係」

2025年度
(4回)

●今後の再生可能エネルギー調達のあり方
●環境関連課題リスク・機会の更新
●グループ全体のKPI進捗報告
●外部講師講演「ネットゼロ移行計画に向けた再生可能エネルギーの導入」

※サステナビリティ委員会

リスク管理

(a) 気候/自然リスク・機会の特定・評価プロセスの詳細

当社グループは、リスク全般を戦略の起点と位置づけ、「企業経営の目標達成に影響を与える不確実性であり、プラスとマイナスの両面がある」と定義しており、企業が適切に対応することで、持続的な成長につながると考えています。
環境関連課題リスク・機会に関しても、同様の認識のもと、プラスとマイナスの両面から特定・評価を行っています。

(b) 重要な気候/自然関連リスク・機会の管理プロセスの詳細

当社グループは、環境関連課題リスク・機会について、サステナビリティ委員会の中でより詳細に検討を行い、各事業会社と共有化を図っています。各事業会社では、環境関連の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業会社社長が議長を務める会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行っています。その内容について、グループ経営会議やリスクマネジメント委員会及びサステナビリティ委員会において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っています。なお、管理プロセスは前年度から変更はありません。

(c) 全社リスク管理の仕組みへの統合状況

当社グループは、リスク管理が経営上極めて重要であるとの認識から、環境関連課題を含むリスク全般を全社統合的に管理するため、リスクマネジメント委員会(年2回以上開催)を設置しています。同委員会は、「リスクの特定・評価」及び「戦略に反映させるリスクの決定」等の重要事項を審議します。当社グループは、リスクを戦略の起点と位置づけていることから、リスクと戦略を連動させることにより、リスクマネジメントを企業価値向上につなげるよう努めています。
中長期的に当社のグループ経営において極めて重要度が高いものは、「重要リスク」と位置づけ、中期経営計画策定の起点としています。環境関連課題リスク・機会についても、毎年、プロセスの変更の有無を確認した上で、見直しをしています。2025年度に実施した重要リスクの見直しにおいては、重要リスクと特定していた「環境課題の重要性の高まり」と「人権尊重の重要性の高まり」について、自然、気候、人権の課題が複雑に絡み合う中で統合的なアプローチが求められる現状を踏まえ、「サステナビリティ課題の複雑化」としました。
リスクマネジメント委員会での審議内容は、サステナビリティ委員会に共有されます。
上記プロセスにおけるリスクマネジメント委員会、サステナビリティ委員会での協議内容、グループ経営会議での承認事項については、それぞれ取締役会(毎月開催)に適時報告されており、取締役会による監督体制の下、当社の戦略に反映し、対応しています。

JFRグループ リスクマネジメントプロセス(PDCA)

戦略

(a) 自然への依存と影響

当社グループの事業は、農産物、畜産物、水産物、木材や水などの資源に加え、土壌や森林、四季のある気候等、多くの自然の恵み(生態系サービス)を享受することで成り立っています。その一方で、私たちの事業活動は、温室効果ガスの排出や、廃棄物・排水の発生など、自然環境に様々な影響を与えています。当社グループは、自社の事業活動と自然環境との関係を、下図のように「依存」と「影響」の双方向で把握・評価し、特定された重要な課題については迅速に対応することが不可欠であると認識しています。

事業活動と生態系サービスとの関わり

(b) LEAP※アプローチを考慮した自然関連課題等の評価

LEAPアプローチとは、TNFDが推奨する、自然との接点、自然への依存・影響、自然関連リスク・機会等、自然関連課題を特定・評価するための統合的なプロセスです。
当社グループは、2023年度に主要事業会社である大丸松坂屋百貨店が全国各地に有する百貨店15店舗を対象に、LEAPアプローチに沿った自然関連課題等(依存・影響、リスク・機会)の特定・評価を実施しました。

※ LEAP : Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズ

① 依存と影響の外観〈Locate〉

TNFDが推奨する「ENCORE」(自然への依存・影響を特定するツール)をベースに、百貨店事業におけるバリューチェーン全体の依存・影響およびその程度を把握するため、ヒートマップを作成し、直接操業(店舗運営や店舗開発)およびバリューチェーン上流(調達)における自然への依存・影響の度合いを確認しました。
ヒートマップを作成した結果、依存度が高いのは、アパレルや農畜水産物のバリューチェーン上流における水資源(供給サービス)に加え、洪水抑制や地形安定化等(調整サービス)であることがわかりました。また、影響度が高いのは、水資源の利用および陸域・淡水生態系の利用であることが明らかになりました。

依存ヒートマップ
影響ヒートマップ

② リスク・機会を評価する店舗の特定〈Locate〉

WWF※1の「Risk Filter Suite」(生態系と水のリスク分析ツール)、WRI※2の「Aqueduct」(水リスク分析ツール)等を用いて、各店舗所在地における生態系の状況を確認し、さらに、当社独自の基準(土地建物の所有状況、売上規模等)と合わせ重要性評価を行いました。その結果、大丸心斎橋店を生物多様性保全における特に重要性の高い店舗と特定しました。

※1 WWF (World Wide Fund for Nature) : 失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行う、100カ国以上で活動している環境保全団体

※2 WRI (World Resources Institute) : 地球の環境と開発の問題に関する政策研究と技術的支援を行う独立機関

大丸心斎橋店

③ 自然に対する依存・影響の要因整理〈Evaluate〉

大丸心斎橋店での事業活動のうち、バリューチェーンにおける生態系サービスの依存と影響が大きい「店舗開発」「衣料品・食料品」「包装資材」について関連する要因を整理しました。

店舗開発

依存

●建材の原材料調達 ●水の使用 ●燃料使用 ●電力使用

●燃料使用

●燃料使用
●電力使用
●水の使用

影響

●土地の転用、開発 ●鉱物資源の採取 ●エネルギー使用 ●GHG排出 ●大気汚染 ●廃棄物排出

●大気汚染
●エネルギー使用
●GHG排出
●廃棄物排出

●大気汚染
●水質汚染
●GHG排出
●廃棄物排出

●燃料使用
●GHG排出
●廃棄物排出

衣料品・
食料品

依存

●綿花、木材などの原材料調達や家畜飼料の調達のための土壌、森林、牧草地の使用
●海域の利用、天然水産資源の採取 ●昆虫による花粉媒介 ●水の使用 ●燃料使用 ●電力使用

●燃料使用

●燃料使用
●電力使用
●水の使用
●紙の使用

●水の使用
●燃料使用
●電力使用

影響

●木材の過剰摂取や農薬使用等による土壌汚染、森林破壊、牧草地の減少、土地の劣化、砂漠化
●水資源の枯渇、海洋生態系の破壊(稚魚乱獲など)
●食品加工過程における排水、水質汚染 ●エネルギー使用 ●GHG排出 ●大気汚染
●廃棄物排出

●大気汚染
●エネルギー使用
●GHG排出
●廃棄物排出

●大気汚染
●水質汚染
●GHG排出
●廃棄物排出

●洗濯時のマイクロプラスチックの流出、水質汚染
●廃棄物排出

包装資材

依存

●紙製包装資材の原材料調達 ●水の使用 ●燃料使用 ●電力使用

●燃料使用

●燃料使用
●電力使用

影響

●過剰伐採による森林の減少 ●エネルギー使用 ●GHG排出 ●大気汚染
●廃棄物排出

●大気汚染
●エネルギー使用
●GHG排出
●廃棄物排出

●廃棄物排出

●燃料使用
●リサイクル時のGHG排出
●廃棄物排出

④ リスク・機会の評価と対応策〈Assess〉〈Prepare〉

(e) 関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンスをご参照ください。

(c) 短期・中期・長期のリスク・機会の詳細

当社グループは、環境関連課題リスク・機会は、長期間にわたり自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、適切なマイルストーンにおいて検討することが重要であると考えています。それを踏まえ、中期経営計画の実行期間である2026年度までを短期、「気候変動に関する主要な目標であるSBT」における短期目標年度である2030年度までを中期、SBTネットゼロ目標年度である2050年度までを長期と位置づけました。
当社グループは、環境関連課題リスク・機会に対し、ネットゼロを実現する2050年までを見据えたバックキャスティングにより、戦略を策定し、対応しています。

(d) リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度

当社グループは、主軸であるリテール事業やデベロッパー事業における商品・原材料の調達や品質、店舗運営、また事業を行う上で欠かせないエネルギーの調達コスト等において、特に生態系の劣化や気候変動による影響を受けると捉えています。そのため、生態系の劣化や気候変動が当社に与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年度時点の世界を想定した当社の戦略のレジリエンスの検証・向上、そしてさらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を毎年実施しています。

シナリオ分析の実施状況

実施年度

実施概要

参照したシナリオ

対象事業

2020

●TCFDの有価証券報告書開示開始

1.5℃~2℃未満シナリオ、3℃シナリオ

リテール事業

2021

●シナリオの見直し

2℃未満シナリオ、4℃シナリオ

リテール事業

2022

●ネットゼロ移行計画の策定
●リスクが発現する時間軸の検討
●財務影響の定量化項目を拡充

1.5℃/2℃未満シナリオ、4℃シナリオ

リテール事業

2023

●対象事業の拡大(デベロッパー事業追加)
●財務影響の定量化項目を拡充
●対応策を拡充

1.5℃/2℃未満シナリオ、4℃シナリオ

リテール事業
デベロッパー事業

2024

●2030年の財務影響の試算見直し
●インターナルカーボンプライシング(ICP)設定を明記

1.5℃/2℃未満シナリオ、4℃シナリオ

リテール事業
デベロッパー事業

2025

●TCFD/TNFD統合開示
●移行計画に投資や資金計画、当年度の取り組み実績を明示

1.5℃/2℃未満シナリオ、4℃シナリオ

リテール事業
デベロッパー事業

シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照し、気候変動及び生物多様性に関して、下表の通り2つの世界を想定しています。それぞれの世界において、当社の事業におけるリスクや機会を検討しています。

気温上昇推定値

シナリオ(想定される世界)

1.5℃/2℃未満※1

世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃未満に抑えることを目指す最も意欲的な世界
(環境関連政策・規制が強化され、かつ市場もそれに整合し、気候変動や生態系の劣化のスピードが抑制された世界)
・カーボンプライシングの導入
・再エネの普及・拡大
・環境に配慮した商品への関心の高まり
・環境価値の高い店舗・街づくり

4℃※2

経済成長を優先し、現行政策のまま成り行きの世界
(新たな環境関連政策・規制は導入されず、市場も整合せず、気候変動や生態系の劣化が進行することを想定した世界)
・自然災害の激甚化(来店者激減、営業停止)
・季節の二季化(旬の消滅、伝統文化の喪失)
・産地の消滅
・調達・物流ルートの断絶

〈参照した既存シナリオ〉

※1 移行:「Net-Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)」(IEA、2025年)
物理:「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)」(IPCC、2014年)

※2 移行:「Stated Policy Scenario (STEPS)」(IEA、2025年)
物理:「Representative Concentration Pathways (RCP8.5)」(IPCC、2014年)

これらのシナリオを踏まえ、百貨店やショッピングセンターなどのリテール事業を主軸とする当社グループは、バリューチェーン・プロセスの活動項目ごとに、TCFD/TNFD提言に沿って、環境関連課題リスク・機会を抽出しました。その上で、気候変動や生態系の劣化ががもたらす移行リスク(政策規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、気候変動や環境関連課題への適切な対応による機会(資源効率、エネルギー源、製品およびサービス、市場、レジリエンス)を特定しました。

(e) 関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス

当社グループは、特定した環境関連課題リスク・機会の中から、「自社にとっての重要性(影響度×緊急度)」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、その重要性を評価しました。特に重要性が高いと評価した項目について、2030年度を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び4℃シナリオの2つのシナリオにおける財務影響を定量、定性の両側面から評価し、それぞれの対応策を策定しました。
なお、財務影響を定量的に評価するための情報が入手困難なリスク・機会については、定性的に評価し、その結果を矢印の傾きによって3段階で表示しています。

JFRグループにおける気候関連リスク・機会の検討期間の定義

気候/自然関連・機会の検討期間

JFRグループの定義

短期

2026年度まで

中期経営計画の実行期間

中期

2030年度まで

SBTにおける短期目標年度までの期間

長期

2050年度まで

SBTネットゼロ目標年度までの期間

JFRグループにとって特に重要な気候/自然関連リスク及び財務影響

JFRグループの事業及び財務への影響が非常に大きくなることが想定される

JFRグループの事業及び財務への影響が大きくなることが想定される

JFRグループの事業及び財務への影響が軽微であることが想定される

JFRグループにとって特に重要な気候/自然関連機会及び財務影響

JFRグループの事業及び財務への影響が非常に大きくなることが想定される

JFRグループの事業及び財務への影響が大きくなることが想定される

JFRグループの事業及び財務への影響が軽微であることが想定される

2030年における財務に対するインパクト試算結果

リスクタイプ

テーマ

内容

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

移行リスク

カーボンプライシング

炭素税や排出量取引制度導入等に伴うコストの増加※1

12億円
(2050年:0円)

7億円
(2050年:0円)

移行リスク

再エネ

再エネ由来電力需要増による調達コストの増加※2

8億円

4億円

物理リスク

自然災害

異常気象・自然災害の激甚化による店舗休業に伴う収益の減少※3

52億円

103億円

事業機会

省エネ

高効率機器への切り替えによるエネルギー調達コストの削減※4

4億円

4億円

事業機会

環境価値の高い店舗・街づくり

環境価値の高い店舗への転換による新たなテナントの獲得に伴う収益の拡大※5

11億円

—

〈2030年度時点を想定した定量的財務影響の算出根拠〉

※1 2030年度時点のJFRグループScope1・2排出量に1t-CO2あたりの炭素価格を乗じて試算

※2 2030年度時点のJFRグループ電気使用量に通常の電気料金と比較した1kWhあたりの再エネ由来電気料金価格高を乗じて試算

※3 過去の自然災害による店舗休業に伴う売上損失額に将来の洪水発生頻度を乗じて試算

※4 2030年度時点のJFRグループ省エネルギー量にエネルギー調達コストを乗じて試算

※5 2030年度時点のJFRグループ不動産収益に環境認証取得ビルの新規成約賃料への影響度合いを乗じて試算

主なパラメータ

パラメータ

出典

炭素税価格
 2030年(1.5℃: 157$/t-CO2、4℃: 87$/t-CO2)
 2050年(1.5℃: 250$/t-CO2、4℃: 87$/t-CO2)

「Net-Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)」(IEA、2024年)

「Stated Policy Scenario (STEPS)」(IEA、2024年)

再エネ由来電気料金価格高

「日本のエネルギー2024」(経済産業省、資源エネルギー庁、2025年)

将来の洪水発生頻度

「Representative Concentration Pathways (RCP8.5)」(IPCC、2014年)

※ 2030年の数値は、IEAのWEO2025から試算

レジリエンスに対する総括

想定したシナリオを前提に気候変動や生態系の劣化がもたらす影響を分析し、その対応策を検討した結果、いずれのシナリオ下においても、当社グループが既に実施している施策および計画している施策が、リスクを低減し、機会の実現に貢献できる実効性、柔軟性を有していることを確認しました。
炭素税等導入によるコスト増や自然災害に伴う収益への影響については、サステナビリティボンド等を活用した再エネ導入の拡大、財務影響リスクを低減する対策を計画的かつ着実に実行していきます。また、シェアリング・アップサイクルやリユース事業等当社の特性をいかしたサーキュラー・エコノミーに資する事業を当社グループの成長につなげ、脱炭素社会の実現にも貢献していきます。
当社グループは、環境関連課題リスク・機会の両面を捉えた取り組みを推進することで、経営のレジリエンスを高めていきます。

JFRグループ 2050年ネットゼロ・ネイチャーポジティブ移行計画

当社グループは、2050年ネットゼロ・ネイチャーポジティブの実現に向け、中長期視点で取り組む必要があるとの認識に基づき、2050年までの移行計画を策定しています。環境関連課題の分析結果、およびそれらによる財務影響を踏まえ、リスクに対しては適切な対応策を講じ、また機会に対しては、顧客ニーズの変化に積極的に対応することで新たな成長機会の獲得を目指す等、短期・中期・長期視点で、具体的な取り組みを推進していきます。本移行計画に、投資や資金計画、また当年度の取り組み実績を合わせて明示することで、それぞれの関係性を明確にし、本計画の実効性をより高めていきます。なお、2025年度の環境投資については、計画どおり実施しました。

※ 移行計画については、2026年5月末時点の計画であり、今後の事業戦略に応じて修正する可能性があります。

指標と目標

(a) 気候/自然関連リスク・機会の管理に用いる指標

当社グループは、生物多様性損失と気候変動は切り離せない課題であると認識しており、両者の包括的な解決を目指しています。その実現に向けて、世界全体の1.5℃目標の達成のための指標及び目標と、資源を効率的に循環させるための指標及び目標を設定し、取り組みを進めていきます。

JFRグループの気候/自然関連リスク・機会の管理に用いる指標と目標

指標

目標年度

目標内容

温室効果ガス排出量

2050年

Scope1・2・3排出量ネットゼロ※1

2030年

Scope1・2排出量73%削減(2017年度比)※2
Scope3排出量40%削減(2017年度比)※3

事業活動で使用する電力に占める再エネ比率

2050年

再エネ比率100%※4

2040年

再エネ比率90%

2030年

再エネ比率75%

食品リサイクル率

2030年

食品リサイクル率85%

環境配慮型商品の展開

2030年

認証商品を含む環境配慮型商品の取扱高拡大

新規開発物件の環境認証取得率

2030年

新規開発物件の環境認証取得率100%

※1 2022年度「ネットゼロ目標」のSBT認定取得

※2 目標見直し前の2017年度比60%削減に対して、2021年度「1.5℃目標」のSBT認定取得

※3 2021年度「1.5℃目標」のSBT認定取得

※4 2020年、RE100に加盟

なお、役員報酬制度における業績連動株式報酬を決定する非財務指標の一つとして、Scope1・2排出量削減率目標を設定し、気候関連課題に対する執行役の責任を明確化しています。

※役員報酬制度

インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用

当社グループは、社内における温室効果ガス排出量を金額換算することにより、温室効果ガス排出量をコストとして可視化し、脱炭素への意識醸成や脱炭素投資と連動した意思決定を促進することを目的として、2024年2月、インターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しました。(社内炭素価格:10,000円/t-CO2)

(b) 温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)・再エネ比率

当社グループは、2017年度から、グループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでいます。2025年度Scope1・2排出量は、59,241t-CO2 (2017年度比69.5%削減)、Scope3排出量は、2,230,492t-CO2 (2017年度比23.8%削減)となります。また、再エネ比率は75.2%となります。
なお、Scope1・2・3排出量および再エネ電力使用量は、第三者保証を取得しています。

Scope1・2・3排出量実績(連結)(単位:t-CO2)

 

2017年度

2024年度

2025年度

実績※1

実績※1

実績※1

2017年度比
(基準年度比)

Scope1 排出量

16,052

14,430

13,635

▲15.1%

Scope2 排出量

(マーケット基準)

178,102

52,695

45,606

▲74.4%

(ロケーション基準)

184,047

136,692

133,887

▲27.3%

Scope1・2 排出量 合計※2

194,154

67,125

59,241

▲69.5%

Scope3 排出量 合計※3

2,927,320

2,247,051

2,230,492

▲23.8%

Scope3 排出量※3

カテゴリ1

調達した製品・サービス

2,701,018

1,958,949

1,934,925

▲28.4%

カテゴリ2

資本財

81,883

58,639

64,266

▲21.5%

カテゴリ3

Scope1・2を除くエネルギー

17,966

30,976

30,322

68.8%

カテゴリ4

輸送・配送(上流)

7,400

3,756

3,556

▲51.9%

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

845

12,838

9,502

1024.5%

カテゴリ6

従業員の出張

627

4,099

5,101

713.6%

カテゴリ7

従業員の通勤

1,158

1,825

2,169

87.3%

カテゴリ9

輸送・配送(下流)

21,086

6,336

8,604

▲59.2%

カテゴリ11

販売した製品の使用

—

14,841

16,111

—

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

68,423

140,487

142,304

108.0%

カテゴリ13

リース資産(下流)

26,914

14,305

13,632

▲49.4%

Scope1・2・3排出量 合計※2

3,121,474

2,314,176

2,289,733

▲26.6%

再エネ比率(%)

—

67.2

75.2

 

※1 LRQAリミテッドによる第三者保証を取得

※2 合計に使用するScope2 排出量はマーケット基準にて算定

※3 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.2.8 (2026年3月 環境省 経済産業省)」・「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.6 (2026年3月)」・IDEAv3.5に基づき算出
Scope3排出量カテゴリ8はScope1・2排出量で算定しているため算定除外
Scope3排出量カテゴリ10、14、15は当社グループの事業プロセスに該当しないため算定除外

* 当社グループのScope1・2・3排出量の算定にあたっては、上記日本のガイドライン等を用いており、サプライチェーン排出量に関する国際的基準であるGHGプロトコルの枠組みに沿って算定しています。

2025年度実績と今後の目標

環境と共に生きる社会をつくる